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レジェの旅 「旅立ちの序曲」
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お風呂からあがって、かみのけを乾かして、パジャマに着替えて、ベビー・リキュールをコクンとひと口だけのんでから、じぶんのベッドに入った。
冷えてぴぃんと張ったリンネルのシーツに素足を潜らせて、そのままパサっと一気に倒れこむみたいにして、布団のスプリングに身体をあずける。
真っ白なシーツを首もとまでたぐりよせて、そのにおいをスーッとすいこむと、日向のにおいがした。気のやすまる感じ。自分のにおいだ。
湯あがりのほてった身体に心地良かった寝具が、だんだんとぬくもってくるのもあって、とても甘やかな気持ちになる。宿のベッドでは味わえないやすらぎなんだと、今夜に限ってそんなことを想いつくのがフシギだ。
あした朝がくれば、ぼくは旅に出立する。
愛用の山高帽子をかぶって、ぼくと一緒にいろいろな街を旅してるリュックを背負って。
かぁさんも、じぃやも付いてこない。
ぼくひとりで、自分の足で国じゅうをまわるのだ。
自分の足、といっても乗り物には乗るけれど、でも何に乗るのか、どこへ行くのか、それはみんなぼくしだい。
学校でつかっているのよりもっと詳しくて、むずかしいことのよく書いてある国内地図と、分厚で小さな旅行時刻表。そのページのうえで広げてきた夢を、この足でたどり、この眼でみるのだ。
だから、わくわくする。
ひとり旅にはなんどもなんども行ったことがあるけれど、いつでも、なんど目でも、やっぱりわくわくする。
だから、ねむれない。
きのうまであんなにスッキリ寝付けたのがウソみたいに、深いところまで沈めずに、いつまでも波のあいまに浮かんでいる。
心臓の音がとくん、とくんとまくらにひびく。鼓動でシーツまで波立つ気がするくらいだ。
まくらに顔をうずめる。赤毛のかみのけが1本落ちているのが暗がりでも分かった。指先きでつまんで、そうしたままふッと吹いてみる。
こわいのではないはずだ。さみしいのでもないと思う。
楽しみなんだ。ちょっぴりの不安もあるけれど、楽しみで。
そんなのは、遠足のまえの夜にねむれないコドモみたいで、やっぱりちょっとハズカシいけど、しかしそうなのだ。
あしたのいまごろは、どこの街のなまりを聴いているだろう。
あるいは夜汽車の寝台か、または宿屋のフトンのなかか。
今夜みるだろう夢よりも、もっと大きな夢を想って。ぼくの眼はさえざえとする。
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